精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問105 (精神保健福祉の原理 問3)

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問題

精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問105(精神保健福祉の原理 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

A高等学校では、保健体育の授業において、心の健康への意識を高め、共生社会への理解を深めることを目的として「こころの健康教育」を実施している。今回は近隣にあるB精神科病院のC精神保健福祉士と、精神障害当事者のDさん(63歳、男性)がゲストスピーカーとして招かれた。授業はC精神保健福祉士とDさんの対話形式で進められた。その中で、Dさんは精神科病院における35年の入院生活やグループホームへの退院、今の生活の様子を語った。Dさんからは、長年病院内で変化のない集団生活を続けたことで気力が失われ、退院を諦めるようになったこと。入院当初は強い思いであった退院を決断するのに長い時間を要したこと。退院した今は、地域に出て良かったと実感するといった気持ちが語られた。次のうち、Dさんの語りから考えられる入院中の状態として、適切なものを1つ選びなさい。
  • 施設症
  • 施設コンフリクト
  • トラウマ
  • スティグマ
  • 回転ドア現象

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この過去問の解説 (3件)

01

Dさんの入院中の様子は、「長年病院内で変化のない集団生活を続けたことで気力が失われ、退院を諦めるようになった」との記述からわかります。

その状態に適した選択肢を選びましょう。

選択肢1. 施設症

施設症とは、長期にわたる入院などによって、介護や治療を一方的に受けるだけの生活が続いたことから、無気力や無表情、情緒の不安定、社会性の低下などの問題が生じることです。

設問のDさんにも、35年の入院生活によって気力が失われ、退院を諦めるようになったとの記述があることから施設症が見られていたことが想定されます。

選択肢2. 施設コンフリクト

施設コンフリクトは、社会福祉施設を新設する際、その周辺に住む地域住民の反対によって、計画が変更や中止を余儀なくされる紛争状態のことを指します。

Dさんの当時の状況とは関係がありません。

選択肢3. トラウマ

トラウマとは、生死に関わるような心理的に強い負荷を感じる体験によって、心的外傷を負った状態です。

その記憶を何度も思い返すことでも大きく動揺し、呼吸困難などが生じます。

Dさんには施設での体験を話すことができており、トラウマと思われる記述はありません。

選択肢4. スティグマ

スティグマとは日本語で「偏見」や「差別」を意味します。

Dさんの話の中では、精神障害者として差別や偏見を受けたという記述はないため、スティグマがあったかどうかは不明です。

選択肢5. 回転ドア現象

治療中の患者や利用者などが入院と退院を繰り返し、なかなか完治に至らない状態を回転ドア現象と呼びます。

Dさんの場合、35年間入院しており、入退院を繰り返していたわけではありません。

まとめ

施設症は長期入院以外でも、障害者施設や刑務所などでも発生します。

精神保健福祉士には様々な活躍の場がありますが、施設症も色々な所で発症されるものであるため覚えておきましょう。

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02

近年の精神科病院への新規入院患者の入院期間は短縮傾向にあるとされています。

 

しかし、顕著に減少されているとされるものの、5年以上の長期入院患者の数は、76000人程度、存在しています。

(令和2年患者調査)

 

したがって、Dさんの地域移行のようなケースは、引き続き重要なテーマの一つです。

 

Dさんが感じていた

 

・長年病院内で変化のない集団生活を続けたことで気力が失われ、退院を諦めるようになったこと

・入院当初は強い思いであった退院を決断するのに長い時間を要したこと

 

などの状態を示す的確な用語を理解するとともに

その他の用語についても理解を深めておきましょう。

選択肢1. 施設症

適切です。

 

施設症とは、外部から隔離された施設(刑務所、児童養護施設、精神科病院など)で長期に生活していることにより、「社会性」「生活能力」などが低下してしまうことをいいます。

 

Dさんの状態を適切に捉えています。

選択肢2. 施設コンフリクト

適切ではありません。

 

施設コンフリクトとは、社会福祉施設の建設・整備が地域社会の強力な反対運動・拒否を引き起こしてしまう状態をいいます。

選択肢3. トラウマ

適切ではありません。

 

トラウマとは、心的外傷と訳され、肉体的・精神的な衝撃を受けたことで、長期に否定的な影響を伴いそれにとらわれてしまう状態をいいます。

 

選択肢4. スティグマ

適切ではありません。

 

スティグマとは、奴隷・犯罪者などにつけられる烙印に由来する用語です。

 

一般的な人と異なる属性について、負のイメージを伴って差別・偏見の対象となることをいいます。

 

 

選択肢5. 回転ドア現象

適切ではありません。

 

回転ドア現象とは、一般的に退院と再入院を短期間のうちに繰り返えす現象をいいます。

 

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03

本設問ではDさんが「長期に入院していた事」「入院生活を通して無気力状態となった事」などがキーワードとなります。これらの当てはまる症状について考えていきましょう。

選択肢1. 施設症

〇 施設症は、施設症候群などとも呼ばれ、長期間外部との関わりを遮断された事で、生きる意味を見出せず、無気力な状態に陥る事などを言います。外部との関わりを遮断されやすい精神病院などの患者によく見られる症状です。

Dさんは長期の入院生活や、変化のない環境での生活がきっかけに無気力状態となり、退院するまでに強い不安を感じたと書かれており、施設症の症状に合致しています。

選択肢2. 施設コンフリクト

✕ 施設コンフリクトとは、地域にゴミ処理場や福祉施設などを作ろうとする時に生じる摩擦の事を言います。施設やゴミ処理場等を建設する事で、自分達にとって不利益な現象が起きる事を懸念した地域住民が反対運動を起こす事などがあります。建設を進めたい事業所側と地域住民とで摩擦が起こり、計画が予定通り進まない事などもあります。

本事例ではDさんが誰かと衝突しているような内容は書かれておらず、不適切です。

選択肢3. トラウマ

✕ トラウマとは、普段の生活では体験する事がないようなストレスがかかる体験(命の危険を感じる体験等)をした事をきっかけに、日常生活に支障をきたすような精神的な苦痛を感じる事を言います。

Dさんは入院が長期化したという描写がありますが、命の危機を感じたような描写はありませんので、不適切です。

選択肢4. スティグマ

✕ スティグマとは、特定の事象を持った人達に対して、周囲の人から根拠なく差別を受けるなど、不当な扱いを受ける事を言います。

Dさんは特に差別を受けているような描写はありませんので、不適切です。

選択肢5. 回転ドア現象

✕ 回転ドア現象とは、病院への入院と退院が短期間に繰り返されてしまう事を言います。

Dさんは同じ病院に長期間入院していたと書かれているため、不適切です。

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