精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問107 (精神保健福祉の原理 問5)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問107(精神保健福祉の原理 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

次の記述のうち、精神保健福祉士法成立の社会的背景として、適切なものを1つ選びなさい。
(注)「障害者権利条約」とは、「障害者の権利に関する条約」のことである。
  • 年間自殺者が3万人を超え続け、国民のメンタルヘルスが社会問題化した。
  • 頻発する自然災害に対し、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の必要性が高まった。
  • 諸外国と比べて精神科の入院医療を受けている者の割合が高く、入院期間も長期にわたっていた。
  • 「障害者権利条約」を批准するため、国内法の整備が急がれた。
  • 「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」が示された。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

精神保健福祉士法は、「精神保健福祉士の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進に寄与することを目的」として、1997年に成立、1998年から施行されています。

 

精神障害者の社会復帰に関する相談援助を行う専門職の必要性

・精神障害者の長期入院やいわゆる「社会的入院」の問題

 

などが長年指摘されており、制定のきっかけとなりました。

 

精神保健福祉士法には、目的、業務のほか、精神保健福祉士の義務(信用失墜行為の禁止義務、秘密保持義務など)などを定めています。

 

 

 

 

選択肢1. 年間自殺者が3万人を超え続け、国民のメンタルヘルスが社会問題化した。

適切ではありません。

 

年間自殺者が3万人を超え続け、国民のメンタルヘルスが社会問題化した」ことを契機に制定されたのは、自殺対策基本法です。

選択肢2. 頻発する自然災害に対し、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の必要性が高まった。

適切ではありません。

 

「頻発する自然災害に対し、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の必要性が高まった」ため、2013年に初期のチームが発足しました。

 

精神保健福祉士法の成立の契機ではありません。

選択肢3. 諸外国と比べて精神科の入院医療を受けている者の割合が高く、入院期間も長期にわたっていた。

適切です。

 

諸外国と比べて精神科の入院医療を受けている者の割合が高く、入院期間も長期にわたっていた」ため、精神障害者の社会復帰に関する相談援助を行う専門職の必要性が指摘されていました。

 

 

選択肢4. 「障害者権利条約」を批准するため、国内法の整備が急がれた。

適切ではありません。

 

「障害者権利条約」を批准するため、国内法の整備が急がれた」ため

 

・障害者基本法の改正(2011年)

・障害者総合支援法の制定(2012年)

・障害者差別解消法の制定(2013年)

 

などが行われていますが、障害者権利条約の発効は2008年であり、それより10年前に精神保健福祉士法は制定されています。

 

 

選択肢5. 「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」が示された。

適切ではありません。

 

「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」が示された。」のは、2004年であり、精神保健福祉士法はそれ以前に制定されています。

 

 

参考になった数22

02

精神保健福祉士法の成立は1997年12月です。

精神障害者の地域での生活や社会復帰を支援する専門職を「精神保健福祉士」と法的に位置づけ、業務を明確にすることを目的に制定されました。

これに関するものを選択肢から選びましょう。

選択肢1. 年間自殺者が3万人を超え続け、国民のメンタルヘルスが社会問題化した。

年間自殺者が急増し、3万人を超えたのは1998年のことですので、精神保健福祉士法の成立より後になります。

選択肢2. 頻発する自然災害に対し、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の必要性が高まった。

DAPTの設立は2013年のことであり、精神保健福祉士法の成立より後のことになります。

選択肢3. 諸外国と比べて精神科の入院医療を受けている者の割合が高く、入院期間も長期にわたっていた。

当時の日本では、長期間にわたる過剰な入院治療による「社会的入院」が問題視されていたこと、地域での精神障害者の生活を担う専門職の必要性があったことから、精神保健福祉士法が成立しました。

選択肢4. 「障害者権利条約」を批准するため、国内法の整備が急がれた。

「障害者権利条約」が国連で採択されたのは2006年のことですので、精神保健福祉士法の成立より後になります。

選択肢5. 「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」が示された。

選択肢の内容は、精神保健福祉士法の目的とも合致していますが、2004年に示されたものですので、精神保健福祉士法の成立より後になります。

まとめ

当時の精神科病床数、入院患者数ともに日本は世界最多レベルであったことが、精神保健福祉士法成立の背景にはあります。

入院中心の医療モデルからの脱却のために、精神障害者の社会復帰・地域生活支援の専門職として精神保健福祉士の法的な位置づけがされました。

参考になった数7

03

精神保健福祉士法は1998年に日本で制定された法律です。各選択肢に挙げられている内容がどの法律の制定と関わっているか、またその法律の成立年も合わせて覚えておくと良いでしょう。

選択肢1. 年間自殺者が3万人を超え続け、国民のメンタルヘルスが社会問題化した。

✕ 選択肢の内容は「自殺対策基本法」の制定のきっかけとなる社会的背景です。

日本では1998年に年間自殺者が3万人を超え、以降も3万人を超え続けました。2003年には年間自殺者数は約34000人程となりピークを迎え、その頃から日本では自殺を個人の問題を捉えるのではなく、社会の問題として捉えるようになりました。その結果、「自殺防止対策を考える議員有志の会」により自殺対策基本法案が国会に提出され、2006年に自殺対策基本法が制定される事となりました。

選択肢2. 頻発する自然災害に対し、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の必要性が高まった。

✕ DPATとは「自然災害や航空機・列車事故、犯罪事件などの集団災害の後、被災地域に入り、精神科医療および精神保健活動の支援を行う専門的なチーム」の事を言います。DPATは2013年に組織として立ち上がったため、1998年に施行された精神保健福祉士法成立の社会的背景とは合致しません。

選択肢3. 諸外国と比べて精神科の入院医療を受けている者の割合が高く、入院期間も長期にわたっていた。

〇 選択肢の内容は精神保健福祉士法成立の社会的背景として適切です。日本では精神科の入院医療が長期化しており、社会復帰を促進するためにも相談援助を担う専門職の必要性が高まりました。

選択肢4. 「障害者権利条約」を批准するため、国内法の整備が急がれた。

✕ 日本が障害者権利条約に批准したのは2014年です。それに批准するために整備された国内法は「障害者基本法」「障害者総合支援法」「障害者差別解消法」「障害者雇用促進法」であり、それらの改正や創設は2011年~2013年に行われました。

1998年に制定された精神保健福祉法成立の社会的背景とは合致しません。

選択肢5. 「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」が示された。

✕ 「精神保健医療福祉の改革ビジョン」が示されたのは2004年であり、1998年に成立した精神保健福祉士法成立の社会的背景とは合致しません。

参考になった数1