精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問112 (ソーシャルワークの理論と方法(専門) 問1)

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問題

精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問112(ソーシャルワークの理論と方法(専門) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

地域活動支援センターで精神保健福祉士の実習を行っている学生Aさんは、利用者Bさんとの関係形成を進めている。Bさんから「友人ができなくて寂しい」と聞き、自分もそのような経験があって悩んだことを自己開示した。その日の実習を終え、帰り支度をしていると、Bさんから声を掛けられ「私と似たような経験をしているAさんなら、私のことを分かってくれる。友達になってほしい」と言われた。AさんはBさんから信頼されているのだと思い「実習中ならいいですよ」と答えた。次の日、Bさんから「今日から友達ね」と声を掛けられた。Aさんは昨日の対応で良かったのか心配になり、実習指導者のC精神保健福祉士に相談すると「専門的援助関係について、改めて考えていきましょう」と指導を受けた。
次のうち、C精神保健福祉士がAさんに指導した内容として、適切なものを1つ選びなさい。
  • パターナリズム
  • 非審判的態度
  • バウンダリー
  • ナチュラルサポート
  • 役割拘束

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この過去問の解説 (3件)

01

援助者と被援助者との関係について

実習期間中であっても、実務についている場合であっても

さまざま気をつけなければいけないポイントはあります。

 

援助者と被援助者との心理的距離が近い場合どのようなことが起こるのか

援助者と被援助者との心理的距離が遠い場合はどのようなことが起こるのか

援助者と被援助者との関係に力の差があった場合はどうなのか

援助者と被援助者との関係が対等に近い場合はどのなのか

 

具体的にイメージしつつ、各選択肢で示された用語の定義なども含め解説します。

選択肢1. パターナリズム

適切ではありません。

 

パターナリズム」とは「医者と患者の権力関係」のような、立場の強い者が、よかれと思い、干渉・介入することです。

 

今回の実習生Aさんと利用者Bさんとの具体的関係性に関連する用語ではないと考えます。

 

 

選択肢2. 非審判的態度

適切ではありません。

 

非審判的態度」は、バイスティックの7原則のうちの一つで、「ワーカーは善悪の判断は行わない」とする考え方です。

 

今回の実習生Aさんと利用者Bさんとの具体的関係性に関連する用語ではないと考えます。

選択肢3. バウンダリー

適切です。

 

バウンダリー」とは、「自分と他人との適切な境界線を引くこと」を指します。

 

今回の実習生Aさんと利用者Bさんとの具体的関係性に関連する用語であると解します。

 

Aさんは、実習指導者との対話を通じて、自身がどういう意図をもって利用者Bさんととかかわろうとしたのか、Aさんが引いた境界線は、果たして適切なものだったのか、考えることになるでしょう。

選択肢4. ナチュラルサポート

適切ではありません。

 

ナチュラルサポート」とは、「「支援」と意識されないような、ごく日常的な助け合いや理解」をさすとされています。

 

今回の実習生Aさんと利用者Bさんとの具体的関係性に関連する用語ではないと考えます。

選択肢5. 役割拘束

適切ではありません。

 

「役割拘束」は、今回の実習生Aさんと利用者Bさんとの具体的関係性に関連する用語ではないと考えます。

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02

精神障害者に限らず、利用者との関係性に悩むワーカーは多いと思います。

この問題の趣旨は、利用者とワーカーとの専門的援助関係とはどのようなものかを考えさせることです。

その上で、正しい選択肢を選ばなければいけません。

選択肢1. パターナリズム

パターナリズムとは、援助者が利用者の意思に関わらず、利用者のためになると判断して介入することを指します。

AさんはBさんの意思を無視して決定や干渉をしているわけではないため、不適切です。

選択肢2. 非審判的態度

非審判的態度とは、利用者の言動に対して、援助者が善悪などの評価をせずありのままを受けいれる姿勢のことです。

AさんはB利用者の「友達になってほしい」という訴えを善悪で判断しているわけではないため、C精神保健福祉士がAさんに行う指導としては不適切です。

選択肢3. バウンダリー

バウンダリーとは、援助者と利用者の間に引かれる「境界線」のことです。

専門職としての援助関係は、実習中だけとはいえ友人関係とは異なり、役割や責任が明確に区別される必要があります。

Aさんが「実習中ならいい」と返答してしまい、一時的にでも援助関係を越えて友人関係を結んでしまったことが、専門的援助関係の境界線を逸脱したと判断されます。

選択肢4. ナチュラルサポート

ナチュラルサポートとは、職場の上司や同僚が障害のある従業員を自然な形でサポートすることです。

今回の事例においては関係ありません。

選択肢5. 役割拘束

役割拘束とは、特定の役割に縛られることで、その役割から離れられなくなる状態を指します。

Aさんが直面した問題は、役割に縛られたのではなく、援助関係と友人関係を混同することで専門職としての役割から離れてしまったことですので、選択肢としては不適切です。

まとめ

利用者との信頼関係を築くことは精神保健福祉士にはとても重要ですが、あくまで援助者と利用者という関係性を保つことが大切です。

AさんがB利用者に自己開示で信頼を得たことは間違いではないものの、援助者としての信頼を得るためであり、B利用者の友人になるためではないことを混同してしまったといえるのではないでしょうか。

参考になった数4

03

本事例では実習生であるAさんが、実習先の施設の利用者であるBさんと適切とは言えない関係になってしまったのではないかという思いに対して指導する内容となっています。

AさんとBさんの関係性に着目し、何が適切ではなかったかという事を説明する必要があります。

選択肢1. パターナリズム

✕ パターナリズムとは、クライエントの利益になると考え、その意思に関係なくクライエントの生活や行動に制限を加える考え方の事を言います。パターナリズムは上下関係のある立場の者同士が陥りやすい考え方です。

本事例ではBさんがAさんの意思と関係なく友人関係になりたいと考えて行動していますが、Aさんの行動や考え方に制限を掛けている訳ではなく、AさんがBさんに何かを強いている訳でもないため、パターナリズムについてAさんに指導する必要はありません。

選択肢2. 非審判的態度

✕ 非審判的態度とは、支援者側の考えで相手の行動や考え方を評価しないようにする事を言います。バイスティックの7原則の一つに挙げられている考え方であり、ソーシャルワーク実践の上では重要な考え方となります。

本事例においては、AさんがBさんの行動・言動を一方的に評価している訳ではないため、非審判的態度についてAさんに指導する必要はありません。

選択肢3. バウンダリー

〇 バウンダリーとは、他者との境界線の事を言います。

本事例においてAさんとBさんは、実習生と地域活動支援センターの利用者という関係のはずです。私的な友人関係を求められたとしても、その関係になる事は適切とは言えず、Aさんは断るべきでした。節度を持った関係を維持するためにも、Aさんにバウンダリーについて改めて指導する事は適切な指導であると言えます。

選択肢4. ナチュラルサポート

✕ ナチュラルサポートとは、障害のある方が就労し、職場に適応・定着するために、職場の従業員や上司からのサポートが受けられる体制が取られていたり、実際に他従業員からサポートを受ける事を言います。

Bさんは現在就労している訳ではなく、Aさんも就労のサポートを行っている訳ではなく、ナチュラルサポートについて指導する必要はありません。

選択肢5. 役割拘束

✕ 役割拘束とは、本人が望まない役割を担う事になっている状況の事を言い、ヤングケアラー等がそれに該当する事が多いです。

本事例ではAさんがBさんから友達関係になる事を提案され、それを了承している経過があります。Aさんは自分の応対に対して不安を感じているものの、不本意な役割を押し付けられている訳ではありませんので、役割拘束について指導する事は適切ではありません。

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